英文校正の過程において、必ずといっていいほどet al. というフレーズを見かけます。これは「…と他の数人」という意味であり、ラテン語のet alii (男性)、 et aliae (女性)、 et alia (性別問わず)の略語です。例えば、ある論文が村山、山本、そして木下先生によって書かれているのなら、これはMurayama et al.と記されます。つまり、日本語では「村山ら」と表記される場合です。村山先生と山本先生だけが著者の場合は、だいたいMurayama and Yamamotoとなります。
このet al. の表記について気になっていたことが二点あったので調べてみました。一点目は、ラテン語表記は通常斜体であるため、et al も斜体にすべきか、ということでした。これはどうも必要がないようで、普通の文字で書いてよさそうです。
二点目は、略語なのだから最後にPeriodをつけるべきか、ということです。調べてみたところ、つけるべき・つけない方がいいとの両意見があります。ジャーナルではどちらも見かけますが、個人的にはやはり略語なのだからPeriodをつけたほうがいいと思います。しかし、ジャーナルの校正者の好みで意見が分かれるようなことなので、ケースバイケースではないでしょうか。重要なポイントは、つけるのであれば毎回Periodをつけて、つけないのであれば全くつけない、というように統一することです。
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et al.
翻訳者泣かせの単語
和英翻訳では日本語と英語という、文法にしろ単語にしろ共通点がほとんど皆無の言語間での翻訳のため、たまに「う~ん」と唸りたくなるような単語と遭遇することがあります。そして、こういう翻訳者泣かせの単語には常連がいます。今日はその常連の単語ふたつとそれらの対応についての話です。
まずは、上記センテンスですでに登場した「対応」。日本語ではなんとも使い勝手のいい言葉で、いろいろな状況で実によく顔を出します。しかし、これを直訳し、尚且つこなれた英語にするのは至難の業。特に翻訳にあまり経験のない人だと、元原稿の日本語にある単語をひとつ残らず英語にしなくちゃと思っている場合もあるようです。「対応」を response, compatible などなど、無理に英語に当てはめるとほとんどの場合、流れの悪い英語になります。ここは直訳ではなく意訳し、「対応」を訳さないほうがうまくいくようです。英文の文脈から意味が間違いなく通じていれば問題ないと思います。
もうひとつは「対象」。これは、「対応」のように訳さなくても大丈夫ということはありません。けれども、直訳ではない場合が多いようです。ちなみに直訳すると subject ですが、場合によっては object の方が適切なこともあるようです。あとは、「対象」が指している人やものをそのまま書く場合もあります。たとえば、patients, participants, treatment など、当然文脈によって変わるわけですが、英文では具体的な名詞を書くほうが英語としても自然であり、また分かりやすくなることが多いようです。
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カッコにブラケットに・・・
自己記入式の質問票などの回答をまとめた内容を論文に取り込む場合、回答内容を分類し、それぞれを区別するために、異なるカッコを利用している場合があります。( )、{ }、[ ]、< > などなど。
しかし、これには問題が二つあります。まずは読む側にとり、とても不親切な表記だということ。もちろん数種類のカッコを使用する場合、最初にそれぞれの意味の説明があります。けれども、一度読んですぐに覚えられるものではありません。読者はその後さまざまな種類のカッコが登場するたびに、この尖ったカッコは何だったっけ・・・と最初の説明文に戻らなくてはなりません。長い原稿だと最後まで読む気がしません。
もうひとつの問題は、 日本語版ワードにはあるけれども英語版ワードにはないカッコの種類があることです。隅付き括弧 【 】などがその一例です。ご自分の日本語版ワードでは問題なく出てきても、受信者のワードが英語版の場合、【 】などは文字化けします。
いろいろ問題のあるカッコ。ぜひ、その他の区別法を検討してみて下さい。
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開き直りの勧め
筆者は米国在住ですが、翻訳という商売柄、日本から来たビジネスマンや科学者に「英語が上達する方法はなんですか」とよく聞かれます。その次に来るのが、英語が苦手なので英語で話したくない・・・これを聞くたびにとても不思議に思うことがあります。日本人にとって英語は外国語なのに、この方たちは職場の同僚や取引関係者からネイティブ並みの流暢な英語を話せることを期待されているのでしょうか。逆に、日本国内で外国人が日本人並みの流暢な日本語を話す事を期待したことがありますか?ほとんどの場合、相手が努力しているのが分かると、拙い日本語でも「お上手」とほめることが多いように思います。
いまやあらゆる分野で公式語となった英語が自由に操れれば、当然いろいろなメリットがあります。発音が悪くて恥ずかしいから、間違ったグラマーで話すのはみっともないから、スペルが間違ってるとバカみたいだからといった理由で英語を使わないようにすると、たしかに恥はかかないかもしれません。けれども、英語は上達しません。また、いつまでも自分の交際範囲が広がりません。日本人が外国人のイマイチの日本語に寛容なように、外国人も日本人のマズイ英語に寛容です。
そうすると英語を上達するためのコツは、なんだと思いますか。筆者は開き直りだと思います。発音が悪くても、グラマーがおかしくても、重要なのは言いたいことが伝わることです。そして場数を踏んでいけば、発音もグラマーもスペルもすこしずつ上達します。まずは、外国語なんか最初からパーフェクトに話せるはずがないじゃないかという開き直りから始めましょう。
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曖昧な表現と訳語の選択 (その1)
翻訳者として日本語で書かれた論文を英訳していると、当然この二言語間にある様々な違いに気付かされます。それこそが翻訳上の面白い発見であるとも言えるでしょう。翻訳作業を通じてつくづく思うことのひとつに、言語間の違いはただ単に単語と文法の違いだけではなく、(特に日本語と英語との場合)言語の「性格」自体も根本的に異なるということがあります。このため、翻訳作業では単に言葉を置き換えればいいというわけではありません。まずは、ソース言語の「性格」を的確に把握して、意味内容を保ちながら目標言語(すなわち英語)の「性格」に変換することも重要なポイントです。具体的な性格の相違点のひとつは、日本語ではセンテンスのすべての要素を明確化しなくてもコミュニケーションができるということに関係します。このおかげで日本語では簡潔なコミュニケーションが成立し、これは有利な点と考えられるでしょう。
これに対する英語の性格と、二言語間の違いのために翻訳者が苦労する点は次回のブログでお話します。
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言語使わずの研究発表
英語、日本語、科学英語についてよく語り、どうやったら研究成果を一番うまく他人に伝えられるか、について書くことがほとんどですが、この間、言語を使わないで研究成果を他人に伝えている例を見つけ、皆さんにも是非見せたかったです。Bobby McFerrinという方のビデオで、Pentatonic scale(五音音階)と人間の神経心理学との関係を表している様子です。科学者としておもしろいかと思いました。ご覧ください。
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PowerPoint での発表
研究発表をする際、まったく緊張しない人はまずいないでしょう。しかも、その発表が母国語以外の言語の場合はなおさらです。そこで、台本を読まなくてもいいようにとスライドに文章を載せる方がいますが、これはお勧めできません。聞く側にとっては見づらいし、発表者が口で読み終える前に聞く側はすでに目で読み終わっていることも多いはずです。こうなると、口で言っていることにはあまり注目してもらえない可能性大です。
もし外国語では思うように語れないといのであれば、別な原稿に言いたいことを書いておいて、それを読みあげるようにしてはどうでしょう。PowerPointのスライドには簡単な(短い)フレーズ、またはデータの図表を載せて、それに対する詳細を口で補足するのが一番聞きやすい発表です。結局他の研究者が見たいのはデータであり、それが見やすければいい発表だったと思ってくれるはずです。
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Response letter を書くにあたり
研究の結果をジャーナルに投稿すると、ジャーナルのほうからコメントが返って来ます。内容についてのコメント、結果の発表の仕方についてのコメント、更なる実験についての要望等、いろいろあります。大体の場合は原稿に様々な変更を加えてからでないと再投稿ができません。その際、原稿の訂正版と共にResponse letterも添付します。その書き方について、注意したいポイントを挙げます:
1. 原稿を読んでくれた方々(Reviewers)からのコメントの一つ一つに返答する。一番好ましいやり方は、各Reviewer commentを挙げた後に一つずつそのコメントに返答するやり方。
2. 変更した箇所があるなら、そのページ数とライン番号を記す。変更した文を全てレターに書く必要はありません。
3. “Thank you for your response.”などといった感謝の気持ちは一回(最初のほうで)表現するだけで十分です。日本語での文章だと感謝の気持ちを何回も表したり、表現も謙った表現になりがちです。けれども、欧米では逆にあまりにも謙った言い方をする人は自分より劣っている、または何かを隠しているのではないかと勘違いされる可能性があるので、ストレートな言い方が一番です。
4. 上記をすべてしっかり押さえた上で、レターは短ければ短いほうがいいです。
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英文校正の仕事でこのような文を目にすると 、一瞬考えてしまうことがあります。Tumor growth (腫瘍の成長または増殖) がImproveすると聞くと、”growth has improved” (成長が改善)というところに注目してしまうせいか、普通「成長」が「改善」する場合は何かが大きくなるという意味に捉えるせいか、「腫瘍が大きくなった」と一瞬誤解してしまいます。もちろん、ここで意図する意味は恐らくTumor growthが減って、腫瘍が小さくなりつつある、ということを書こうとしているのだろうとは思います。それなら、Improvedではなく、Reducedと書いたほうが正しい表現でしょう。これは、英語が母国語である方でも使うフレーズですが、誤解されやすい言い方だと思います。些細なことのようですが、このような点に注意することで科学的にも分かり易い英文になるでしょう。
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客観性を表す言葉
大学院時代に担当の教授から学んだことのひとつに、科学者・研究者として客観性を保つことの重要さがありました。研究者とは自分を取巻く世界の真実をひたすら追究して、仮定を立て、それを試し、その仮定が正しいのか正しくないのかを確認するのが仕事なんだ、とよく言っていました。実験の準備やその実施、また結果の分析において客観性を考慮するのは当然ながら、最後に結果を報告する時までも客観性を保つべきだと。そこで、ある論文を書いてその教授に見せたところ、論文中の次のような文がコメントで真っ赤になっていました。
Here, I demonstrated that the distribution of these cells
affected infection by fungi.
I also prove that some species do not contain these cells,
but that there is no evolutionary pattern to determine this.
In future studies, I hope to find other mechanisms of
infection control elicited by these species.
どうしてこのような文に赤ペンが入ったかわかりますか?微妙なことですが、まず一つ目の “ I demonstrated” がいかにも最初から最後までその仮定が正しいということを見せたいという気持ちが見えすぎている、ということでした。二つ目の “prove” は同じような理由で、個人的な目的(つまり自分の立てた仮定が正しいのだ、と示すこと)が客観性に欠けている、という理由でずらずらと説教が赤ペンで書かれていました。最後の文も、本来はそのメカニズムの有無を追及すべきなのに、メカニズムがあることを希望していると書いてしまったので、客観的ではないと言われました。
それでは、上記の文を客観的に書こうとしたら、どのようになるのでしょうか?
Here, I found that the distribution of these cells affected
infection by fungi.
I also discovered that some species do not contain these
cells, but that there is no evolutionary pattern to determine this.
Future studies should focus on other possible mechanisms of
infection control elicited by these species.
大した違いではないようですが、あくまでも自分の仮定が実際自然のあり方だと言い張るのではなく、客観的に自然のあり方が何なのかに焦点をおいて仮定を立て、実験を行い、結果を分析し、そして書き上げたのだ、という文章になっていると先生に言われるまでOKが出ませんでした。貴重な勉強でした。
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