Posted on October 3, 2011 by proedit
大学院時代に担当の教授から学んだことのひとつに、科学者・研究者として客観性を保つことの重要さがありました。研究者とは自分を取巻く世界の真実をひたすら追究して、仮定を立て、それを試し、その仮定が正しいのか正しくないのかを確認するのが仕事なんだ、とよく言っていました。実験の準備やその実施、また結果の分析において客観性を考慮するのは当然ながら、最後に結果を報告する時までも客観性を保つべきだと。そこで、ある論文を書いてその教授に見せたところ、論文中の次のような文がコメントで真っ赤になっていました。
Here, I demonstrated that the distribution of these cells affected infection by fungi.
I also prove that some species do not contain these cells, but that there is no evolutionary pattern to determine this.
In future studies, I hope to find other mechanisms of infection control elicited by these species.
どうしてこのような文に赤ペンが入ったかわかりますか?微妙なことですが、まず一つ目の “ I demonstrated” がいかにも最初から最後までその仮定が正しいということを見せたいという気持ちが見えすぎている、ということでした。二つ目の “prove” は同じような理由で、個人的な目的(つまり自分の立てた仮定が正しいのだ、と示すこと)が客観性に欠けている、という理由でずらずらと説教が赤ペンで書かれていました。最後の文も、本来はそのメカニズムの有無を追及すべきなのに、メカニズムがあることを希望していると書いてしまったので、客観的ではないと言われました。
それでは、上記の文を客観的に書こうとしたら、どのようになるのでしょうか?
Here, I found that the distribution of these cells affected infection by fungi.
I also discovered that some species do not contain these cells, but that there is no evolutionary pattern to determine this.
Future studies should focus on other possible mechanisms of infection control elicited by these species.
大した違いではないようですが、あくまでも自分の仮定が実際自然のあり方だと言い張るのではなく、客観的に自然のあり方が何なのかに焦点をおいて仮定を立て、実験を行い、結果を分析し、そして書き上げたのだ、という文章になっていると先生に言われるまでOKが出ませんでした。貴重な勉強でした。
英文校正 • 医学翻訳 のPEJブログより