Posted on June 30, 2014 by proedit
前回、服薬順守に関連して、かつての医者主導の治療から、患者さんの自主的治療参加を重視した治療が現代の流れとなっていることにふれましたが、日本では未だに、”medical paternalism (医療父権主義[パターナリズム])”の特徴が、医療のあらゆる面で根強く残っているといわれます。医療制度どうこうというよりも、確かに、昔からの、お医者様の言うことだから…、とすんなり聞き入れてしまう姿勢が、患者さんの立場からも、家族の立場からも、自然にとられてると身近な例で気付かされます。一方で、治療方針などの判断・決定において、患者さんが自己決定する立場をとるために何が必要かというと、それは、体制や根本的姿勢の変換に加え、情報の提供なのです。
“Choosing Wisely”という活動はご存知でしょうか?米国内科専門医認定機構財団(ABIM)の取り組みで、検査や処置の”overuse”を減らし、医師、患者ともに賢く効果的な治療方針を選択するきっかけとなるよう、あるリストが作成、出版されています。これらのリスト、”Things Physicians and Providers Should Question” というのですが、もともとは、National Physicians Alliance と Consumer Reports が、3分野で「広く行われている検査や処置で、その必要性が(患者と医師の間で)疑問視され議論されるべきもの」を特定し、リスト化したことからはじまったそうです(http://www.abimfoundation.org/Initiatives/Choosing-Wisely.aspx)。いまではそのリストは数百項目に達し、全米の有力学会がそれぞれ、もしかしたらベネフィットがなくて場合によっては危害を与える検査や処置、をリストアップしています(こちら。http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/)。
ここで注意しておきたいのは、これらのリストが、必ずしも、リストに含まれる検査や処置が無駄であることを知らしめる為に作られたわけではないという点です。実はここで、今回の題目にある、”spur conversation”という表現が鍵となります。なかなかぴたりとくる日本語表現が思いつかないのですが、”spark discussion” や “promote conversation(s)”と同様、「議論/会話を誘発する、促す」「拍車をかける」といった意味になると思います。ABIMのウェブサイトでも説明されているように、これらのリストは、
“(are) meant to spur conversation about what is appropriate and necessary treatment”
“(will) spark discussion about the need—or lack thereof—for many frequently ordered tests or treatments”
…つまり、その根底にあるのは、医療資源の効率的使用ですが、これらのリストは、医療保障に何を含むか、省くかの決定に用いられるべきではなく、いまここで、適切な治療とは何なのか、必要な治療は何なのか、という会話が医師と患者の間で交わされるのに役立つ情報を提供するものであるということが強調されています。また、医師により頻繁に命じられる検査や治療の必要性、あるいは不必要性について、議論されるきっかけをもたらすことが期待されています。詳しくはこちら。http://www.choosingwisely.org/about-us/
英文校正 • 医学翻訳 のPEJブログより